台湾一美しいMRTの駅へ

2009年4月に台湾で発刊された『台灣建築不思議』という本がある。馬可孛羅文化という出版社から出された台湾の個性的な建築物を写真と文で紹介する内容。著者の李清志さんは建築専門の作家さんだそうで、FM局で建築コーナーのDJを担当していたり、大学の副教授も務めている方。

この本を台北の本屋さんで見つけてから、台湾へ行きたくなると夜寝る前に眺めるのが習慣となっていた時期があった。その中には、以前やはりその建物の珍しさで見に行った北投の図書館なども紹介されているのですが、とりわけとある駅に惹かれてしまったのです。日本でもっとも知られた、台湾の人気絵本作家さんこと「幾米(Jimmy)」さんの絵本の世界が、駅のプラットホームや階段などに生かされた駅があるという。そのページのタイトルも非常にそそられる。

「台灣最美的捷運車站 南港車站公共芸術」

(台湾で最も美しい地下鉄の駅、南港駅の公共芸術)

、とある。

そう、台北の地下鉄(MRT)の駅は、「公共芸術」の名で色々な芸術的な(?)モニュメントや銅像などが駅ごとにある。たぶん、普段はその存在を目にしながら気にもせず通り過ぎてしまっていたけれど、幾米(ジミー)さんの絵本の世界がプリントされた駅なんて、想像が出来ない。これはいつか見に行ってみたい。そう思って半年以上が経ってしまった。日本在住なのが毎度のことながら悔やまれる。そして、台湾へのショートトリップも半年か一年に一回はしているにも関わらず、なかなか行く機会が取れなかった。

というわけで、今年最初のお出掛けは、台北のMRT「南港」駅に決まり!

台北の地下鉄(MRT)の改札の近くに大抵、観光旅行客向けのMRTの路線図が置いてあります。中国語はもちろん、日本語や英語版などいろいろ種類があるので気に行ったものを一部もらうと動きやすい。さらに、幾米さんについての記述はありませんでしたが、MRTの各駅の公共芸術を特集したパンフレットも置いてありました。いかにも「芸術!」みたいな銅像だったり、何がなんだかわからないモニュメントだったり、中国風の切り絵の壁画だったり、いろいろとあるようです。

さて、MRTのブルーのラインの「南港」行きに乗り込みます。(ちょうど台北101のある「市政府」站や服の問屋街が広がる五分補に近い「後山埤」站と同じ方面です。その現在の終点駅「南港(ナンガン)」站で下ります。台北MRTの中でも最近できた新しい駅です。

降りたら幾米さんの世界が広がっている…と想いを馳せて降り立つと、ちょっと戸惑うかもしれません。たしかに駅のプラットホームに彼の描いた絵本の世界が広がっています。(ごめんなさい、幾米さんの絵は大好きで中文版の絵本も何冊か持っているのですが、実は絵しか眺めたことがないので、これがどの絵本のどのシーンで…ということがわかりません。)

ただし、ごく一部のエリアだけなんです。幾米さんの絵が描かれたところは。もっと降り立った誰もが目にできるように全面的にジミーさんワールドにしてくれたら良かったのに!と思ってしまいますが、こればかりは予算とか何かいろいろとあったのでしょうね。でも、絵の前にいくととっても素敵な気分になれました。

本にはもっと色々な場所に幾米さんの世界が広がっている写真が乗っていたので、期待を持ってエスカレーターを上に上がります。まずは、クリスマスはとっくに終わってしまったけれど、サンタさんがお出迎えしてくれました!

まず最初に目に飛び込んできたのがこちらの兵隊さん。すでに地元の女の子二人組がこの絵の前で記念撮影をしていました。(上の写真は改札を出る前のもの。下の写真は出た後のもの。改札の外からも間近で見ることができます。)

そして、探すこと数分。どうやら他には1番出口と2番出口にあるそうです。

上記は、MRT「南港」站の地図。右側がプラットホームの図で、左側が出口の案内図です。この左側の出口案内図にある「1番」と「2番」出口付近に(地上に出る手前側)幾米(ジミー)さんの絵があります。「3番」と「4番」出口には何もありませんでした。


まずは「2番」出口に向かう途中にこちらの壁画。

さてエスカレーターか階段で2番出口へ向かう途中です。

通り過ぎる人の多くが、壁の絵をぼ〜っと眺めながらエスカレーターを登っていきました。

こういう駅を通勤や通学に通ってみたいなぁと夢見心地になります。

ふう、登りきりました!(といっても、エスカレーターで、ですけれどね/笑)

続いて「1番」出口へ。

なんでも、台北にMRTが開通してから「公共芸術」として飾られてきたのは、国外のアーティストのものが多かったそうです。それは、今まで台灣出身の芸術家の中で、世界的に知られた人が居なかったからなんだそうで、そんな中にあって、近年世界各国で著作の絵本が様々な言語に翻訳され、絵本を原作にして舞台や映画化(『向左走、向右走』)された絵本作家の幾米(ジミー)さんに白羽の矢が当たり、この駅が幾米(ジミー)さんワールドになることが決まったとか。

地上に出ると、幾米さんの世界は終了。


歩いて5分程のところに鉄道の駅がありますが、駅周辺はひっそりとしていて、海外から出稼ぎにきたアジア系の外国人の家族がぞくぞくMRTの駅に吸い込まれていくのを眺めていると、ここは台北?と、少なくとも台北の街中と比べて、ちょっと違う雰囲気が感じられます。お店屋さんもあまり見当たらず、もし「南港」站のジミーさんを見に行くならば、地上へ上がらなくても良いかもしれません。少なくとも私が行ったのはうす暗くなりかけの夕方だったので、ちょっと寂しい、何もないところといった印象でした。


もし、美食の旅も飽きて(私は飽きる程も美食を頂いていませんが・・・汗)、ショッピングやマッサージも置いておいて、台北をふらっと散策したいなぁと思った時の候補地の一つに、もしよかったら入れてみてくださいね。MRTに乗り込んで到着するとそこは絵本の世界です。

ちょっとコンパクトでところどころ端折った感はありますが、素敵な駅なのは確かです。郊外なのでそれほど人も多くないので(時間帯にもよるとは思いますが)、のんびり幾米(ジミー)さんの絵を鑑賞するのもいいものです。また、ふらっと行きたいなぁ。